最近では、家庭でうさぎをペットとして飼う人が増えてきています。
実際に、今現在もうさぎを飼おうか検討しているという人も多いのではないでしょうか。
ここでは、そんなうさぎの歴史や文化についてご紹介します。
目次
うさぎって何科の動物?
うさぎは、ウサギ目ウサギ科に属する動物です。
このうちペットとして飼育されているうさぎはアナウサギを品種改良したものであり、ウサギ目ウサギ科アナウサギ属に分類され、属する動物はアナウサギのみです。
また、その中でも家畜用に改良されたものは「カイウサギ」と呼ばれます。それに対し、ペットとして家庭で飼われているウサギは「イエウサギ」と呼ばれています。
うさぎはウサギ目ウサギ科に属する動物です。
ウサギ科の中でもウサギ亜科というのが、中新世から現世まで生き残っている唯一の科です。
生物学では、科の次は『属』で分類されるようになりますが、ウサギ亜科の中にもアカウサギ属、ピグミーウサギ属など、数多くの『属』が存在します。
そんな中、うさぎは生態的に大きく2つの属に分けることができます。
ノウサギ属とアナウサギ属の違いとは?
英訳するとノウサギの方が「hare」、アナウサギの方が「rabbit」となります。
この2つで生態が大きく異なるのですが、このうちアナウサギ属の方が現在ではペット用のカイウサギとなりました。英語でもrabbitと呼ぶことから、私達がイメージするうさぎというのは、アナウサギの方なんですね。
アナウサギもノウサギも草食性であり、草や木の葉、樹皮、種などを食べ、時に昆虫も捕食します。食べるものは同じなのですが、アナウサギとノウサギが決定的に違うのは生活環境です。
ノウサギ属を除いたアナウサギ属全般は、その名前の通り、穴を掘って地中で生活します。
そのため外敵から身を守りやすく、危険を感じるとすぐに巣穴に身を隠します。地中で生活する時間が長いため、生まれたばかりの幼獣も、体毛が無く目が開いていません。
このアナウサギは主にヨーロッパが原産とされており、アルジェリアやスペイン、モロッコ、ポルトガルなどの国に分布しています。それらが人為的に移入され、日本やオーストラリア、ニュージーランドなどのオセアニア地方でペットとして飼われるようになりました。
一方のノウサギは、アナウサギとは違い、草原や農耕地などに生息しています。
主に単独での生活を好み、危険を感じると巣穴ではなく、茂みや森の中に隠れることが多いです。
アナウサギとは違って地表で生活する時間が長いので、外敵から逃げるために、非常に足が速いのが特徴です。
アナウサギが時速40~60kmで走るのに対して、ノウサギは70~80kmで走ることができます。これは100mのタイムに換算すると、5.14秒もの速さになります。
地表にいる時にすぐ外敵から逃げられるよう、脚の筋肉が非常に発達していることが分かりますね。ちなみにウサギの天敵はキツネなのですが、キツネの足は時速50km程度です。
アナウサギとは違い巣穴に隠れるという習性が無い分、天敵を上回るスピードで走れるように進化してきたんですね。
アナウサギがヨーロッパを中心に分布しているのに対して、ノウサギはアフリカ大陸や北アメリカに多く生息しているのが特徴です。
農耕地に生息する個体が農作物を荒らしたり、植林している苗木を食べてしまうなど、害獣として見なされることもあるようです。ペットとして飼育されている種ではない分、人間の生活を脅かしてしまうこともあるんですね。
またノ、ウサギの中には開発が進んでいることで住処を奪われ、数が減少している種も存在します。
うさぎの歴史について
可愛らしいイメージの強いうさぎですが、かつては人間の家畜であり、また狩りの獲物でもありました。ここでは、うさぎが家畜や獲物としてどのような歴史を歩んできたのかをみていきましょう。
家畜としてのうさぎ
古代ローマ時代から、うさぎは食用の動物として利用されていました。そして、本格的に家畜として飼育され始めたのは中世ヨーロッパの僧院が始まりです。この頃から、品種改良も行われるようになりました。
そして、一般の農家でも飼育され始めたのが11~12世紀頃です。しかし当時のうさぎの飼育目的は食用にすることで、ペットとして飼育されることはなかったようです。
獲物としてのうさぎ
何百年にも渡って、家畜として飼われていたうさぎが狩りの対象とされるようになったのは、16世紀頃のことです。しかし、狩りといっても本格的なものではなく、男性たちが狩りに出かける一方で、上流階級の貴婦人たちは捕まえた野生のうさぎを宮殿の庭園に放して狩りの真似事を楽しんでいました。そして、このことはうさぎの更なる品種改良のきっかけになったとも考えられています。
日本におけるうさぎの文化
うさぎの歴史が始まったのはヨーロッパであり、日本に渡ったのはそれよりもずっと後のことです。しかしながら日本の古典や昔話にはうさぎが数多く登場し、またうさぎが描かれている絵画も残っています。このことから、日本でもうさぎは長い間人々に親しまれてきたといえるでしょう。
ここでは、日本におけるウサギ文化を語るうえで欠かせない「かちかち山」、「因幡の白兎」、「百兎図」の3つについてご紹介します。
かちかち山
かちかち山は、おばあさんを殺したたぬきの敵をおじいさんに代わってうさぎが討つ話です。古い日本の民話で、室町時代末期には現在のかちかち山が成立していたと考えられています。
物語の中ではうさぎは知恵のある人間の見方として描かれており、たぬきを懲らしめるために背中に大やけどを負わせ、更に水に沈めて死なせます。しかし、これはたぬきを無意味に痛めつけるための行為ではありません。日本を含む世界各地では古代から裁判の一形態として「火責め」や「水没」が行われており、物語中ではうさぎが裁判官としての役目を担っているといえるでしょう。
なお、かちかち山は太宰治によって新解釈で書き直されており、その物語ではうさぎは純真な美少女、たぬきはうさぎに恋している中年男として描かれています。また、滝廉太郎作曲の童謡も存在しています。
因幡の白兎
因幡の白兎は、日本神話(古事記)に登場するうさぎの物語です。大黒様という神様がワニに毛を剥ぎ取られたうさぎを助ける物語で、大黒様が兄弟たちを差し置いて国を持った理由を説明する一連の話の一部となっています。
そして、この物語に関連してよく知られているのが、鳥取県鳥取市にある白兎神社です。白兎神社の主祭神は「白兎神」であり、因幡の白兎の物語の内容から、皮膚病に霊験のある神だとされています。更に縁結びの神様としても知られており、2010年には近隣の白兎海岸が、NPO法人地域活性化支援センター運営の「恋人の聖地PROJECT」にて「恋人の聖地」に認定されました。
百兎図
1784年には、江戸時代中期~後期の絵師である円山応拳によって「百兎図」が描かれました。画中には実に100匹以上のうさぎが描かれており、ノウサギは群れを作らないことからアナウサギが描かれていると考えられます。この絵画が、年代を特定できる中で最も古いアナウサギ飼育史の資料だといえるでしょう。
ペットとしていつから飼われるようになった?
今では当たり前のようにペットとして飼われるようになったうさぎですが、どのような経緯で、家庭で飼育されるようになったのでしょうか。
ペットとしてのうさぎの始まりは16世紀
16世紀頃のヨーロッパでは、貴族の間で狩りが流行していました。そして、馬車に乗って狩りに向かうときに貴婦人たちに可愛がられていたのがうさぎです。小さくて大人しく撫で心地のよいうさぎは、膝の上にのせて愛でるにはぴったりだったようです。
そして、このような背景からうさぎの品種改良が行われるようになりました。この後から小型のうさぎも登場し、うさぎのペットとしての歴史が始まります。
日本で明治時代に起こったうさぎブーム
うさぎが日本に渡ったのは16世紀のことですが、当時のうさぎは小型化されたといっても2~3㎏ほどあり、現在でいう中型のうさぎでした。そのため、当初はペットではなく家畜として利用されることがほとんどでした。
しかし、明治維新の後に庶民の間で突如うさぎブームが起こります。そのときのうさぎブームは凄まじいほどで、1872年には月1円のうさぎ税が課せられるようになりました。当時の公務員の初任給は8~9円ほどであったことから、相当に高い税金がうさぎに課せられていたといえるでしょう。
第二次世界大戦以後は実験用としての飼育が増加
繁殖が簡単で食料にもなることから長い間家畜として飼われたうさぎでしたが、第二次世界大戦後は家畜として飼われるうさぎの数は減少します。その代わりに、医療実験などのために飼育されるうさぎの数が増加していきました。
また、ペットとして飼われるうさぎの数も増えていきました。うさぎの品種も増え、体重1㎏未満の小型の品種もどんどん登場しました。その中でも「ネザーランドドワーフ」は注目を集め、今でもペットのうさぎとして高い人気を誇っています。
現在は「第3のペット」として人気が再燃
現在では、うさぎは「第3のペット」として人気を集めています。猫や犬に比べると飼育数は少ないものの需要は高まっており、1999年と2011年を比べると、うさぎの飼育数は実に1.5倍となっています。
ペットとしてうさぎを選ぶ理由としては、猫や犬と違って鳴かないため飼いやすいということが挙げられます。そのため、一戸建てよりも集合住宅で多く飼われている傾向があります。ここ最近ではうさぎ専門店の数も急激に増えており、今後もペットとしてのうさぎの飼育数は増えていくといえるでしょう。
長い歴史を経て人気ペットの仲間入りしたうさぎ
ここでご紹介したようにうさぎの歴史は非常に長く、日本の文化とも深いかかわりがあります。とはいえ、かつてうさぎは家畜であり獲物でした。ペットとして愛されるようになってからはまだ日が浅いといえるでしょう。
そして現在、うさぎの人気は急上昇しています。ペットとしての飼育数が多いのはやはり猫と犬ですが、うさぎも家庭で飼育しやすく、最近ではうさぎ専門雑誌も発行されています。ペットを飼うことを検討している方は、ぜひうさぎも選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。
ペットとして飼われているうさぎの代表種とその寿命は?
今度はペットとしてのうさぎを見ていきましょう。
アメリカンラビットブリーダーアソシエーション(ARBA)では、うさぎの種類を49種類と定義しています。
うさぎは種類によって見た目だけではなく性格も大きく変わるのが特徴です。
それではこの項目では、日本で飼われているうさぎのうち、人気の品種を見ていきましょう。
ネザーランドドワーフ
オランダ現在のウサギで、おそらく「うさぎ」と聞いて真っ先にイメージする品種でしょう。ピンと立っている耳が特徴で、ペットとして飼われているウサギの中では最も小柄であり、大人になっても体重は1kgほど、体長も25cm前後にしかなりません。
毛色のバリエーションが豊富で、茶色、白、セピアブラウン、ブルーなど、多くの色があります。
性格は活発でなつきやすく、好奇心が旺盛です。
しかし大変臆病なので、基本的には飼い主にしか懐きません。
ただ飼い主には甘えてきたり、抱っこしているとそのまま腕の中で寝てしまうこともあり、非常に愛情深い性格でもあります。
寿命は飼育下で5年~10年ほどと言われていますが、8年以上生きることは珍しいです。
ロップイヤー
大きく垂れた耳と、丸く潰れたような鼻が特徴のうさぎです。
ロップイヤーの中にもいくつかの種類があり、イングリッシュロップ、フレンチロップ、アメリカンファジーロップ、ライオンロップなどの品種が存在します。
その中でも一番人気のロップイヤーが、ネザーランドドワーフと掛け合わせた品種である、『ホーランドロップ』です。
体重は2~3kgで、体長は30~35cmとネザーランドドワーフより一回り大きいです。
前述の通りネザーランドドワーフと掛け合わせているので他のロップイヤーと比べて小柄なので飼いやすく、カラーバリエーションが豊富なので大変人気のある品種となっています。
性格もおおらかで人見知りせず警戒心も薄いのですぐに懐いてくれます。
初心者におすすめの品種と言えそうです。
また、ホーランドロップの寿命は7~10年ほどです。
ミニレッキス
ミニレッキスは大型のレッキス種とネザーランドドワーフを掛け合わせた品種です。
レッキス種は非常に毛触りがよいのですが、そのレッキス種を小型化したミニレッキスは、抱き心地の良さに定評があります。
性格もやんちゃで人懐っこく初めてうさぎを飼う方でも飼いやすい性格です。
また、ストレスに弱くデリケートな生き物であるうさぎの中でも比較的環境の変化に強いのが特徴です。
もちろん個体差はありますが初めて家に連れて帰った時、ネザーランドドワーフは新しい環境に慣れるのに2週間ほどかかるのに対しミニレッキスは数時間でくつろぎ始めたりします。
こうした環境適応力の高さも、ミニレッキスが飼いやすい要因の一つです。
大きさは30cm~35cmほどで、体重は1.5~2kgほど寿命は7~8年と言われています。
まとめ
うさぎって何科の動物?歴史や日本での文化、ペットとして飼われるようになった背景について紹介しました。
ひと口に”うさぎ”と言っても、実に多くの種が存在し、それぞれ特徴があることが分かったと思います。
あなたがうさぎと一緒に生活すると決心した時の参考にしてくださいね。