人が体調不良のときは医師や保護者に「どんな症状があるのか」「どこが痛いのか」などを説明しますが、うさぎはそうはいきません。
喋ることができず、態度で訴えることしかできないので、飼い主はよく観察してうさぎの体調不良のサインを見逃さないことが大切です。
また、体調不良のサインや兆候を見つけられたら、放っておかず必ずかかりつけの獣医などに相談しましょう。
この記事ではうさぎにどんな体調不良があってどんなサインを出すのかを紹介していきます。
食欲不振について
まず一番わかりやすい体調不良のサインは「食欲不振」です。
うさぎを始めとするほとんどの動物にとって、食べることは生きることに直結した重要な行動です。
この日々の食事で、食べる量が少ない・食べないということがあれば、必ずうさぎにとって大事なサインだと捉えましょう。
食欲不振の際にポイントとなるのは、ご飯を食べない以外にも体調不良のサインを合わせて出しているかどうかになります。
例えば下痢・嘔吐をしているという場合、消化器官系が原因で体調を崩している可能性があります。
下痢や嘔吐がなくても、歩き方がおかしい・動こうとしないという場合、脚を痛めておりそれがストレスとなって食欲不振に繋がっている可能性があります。
うさぎをよく観察して、どこかかゆそうにしている・皮膚の一部が赤くなっていることが分かった場合、擦れや湿疹などの皮膚系のトラブルとなっている可能性があります。
この場合もストレスから食欲不振を引き起こしている可能性が高いです。
特に体重が平均より重い子の場合、脚に負担がかかり皮膚が床と擦れてしまうことが多くありますので注意しましょう。
これらのサインがなく、普段と全く変わらない態度でご飯だけを食べないというケースもあります。
「ついおやつをあげすぎてしまった」ということが原因でご飯を食べないのもうさぎにとっては珍しくありませんので、その場合は食事を再開するまで見守ってあげましょう。
そのほか「主食の味に飽きた」という理由でご飯を食べなくなってしまう子もいます。
別のご飯を与えてみて、それを食べるかどうかで食欲不振なのかどうかが判断できます。
そのためにも、主食の牧草やペレットとは違うタイプのものを一食分程度ストックしておけるといいでしょう。
食欲不振に気付けるかどうかで、うさぎの病気に対する初動は大きく変わってきます。
病気が原因の食欲不振なのか、おやつのあげすぎなのか、これらを判別できるようになるためにも、毎日うさぎにあげたものと量をメモに取る習慣をつけるのをおすすめします。
特に「何か食べたものが原因で病気になった」という場合、症状が出るのは食べてから数日後というのも珍しくありません。
相談した獣医がすぐに判断できるよう、いざと言う時に備えうさぎの食事記録のノートをつけてあげてください。
うっ滞や毛玉症
消化が難しいものが胃に溜まり、腸にガスなどが溜まってしまう症状をうっ滞と呼びます。
この「消化が難しいもの」が自身の毛玉などであることが多く「毛球症」と呼ばれることもあります。
また、消化が難しくない食べ物しか食べていなくても先行して胃腸に機能障害が起きている場合、消化しきれず胃腸に食べ物が溜まってしまい同様のうっ滞の症状が見られるようになります。
うさぎは猫や犬のように嘔吐して胃の中のものを吐き出す構造をしていない動物のため、このうっ滞を引き起こすうさぎは少なくありません。
うっ滞かどうか見た目で判断できる部分として、「お腹が張っている」というのも特徴です。
またお腹を触らせたがらないというのも特徴ですので、お腹が張っていても観察させてくれないという時などはうっ滞を疑いましょう。
そのほか、ガスが溜まり腸が張ると痛みが出ますので、ストレスから歯ぎしりをするうさぎも多いです。
「便がいつもと違う」というのもうっ滞で見られる症状ですので、これらのサインが出ているようであれば、うさぎが食べているものを記録しているノートと一緒に獣医の元を訪れましょう。
日頃からうっ滞予防として意識できることに、「運動不足の解消」と「食物繊維の摂取」の二つがあります。
この二つを意識するだけで、運動不足で原因で内臓機能がうまく活動してくれないケースや、消化を助ける食物繊維の摂取が不足して消化不良を起こしてしまうケースを防ぐことができます。
特に食物繊維の高い食事は、おやつに野菜などを与えることで補助していけますのでぜひ取り組んでみてください。
これらが原因で起こるうっ滞を予防できるだけでうさぎは体調不良から来るストレスに悩まされずに済みますので、この2点は日頃から意識してあげてください。
不正咬合
うさぎの歯は途中で成長を止める人間の歯と違い、成長を続ける「常生歯」という歯を持っています。
繊維質の高い食事を摂るほか、歯ですり潰す食事を取り摩耗させることで歯を削ります。
この歯がうまく削れず他の機能へ障害をもたらしているときに「不正咬合」と呼ばれ治療の対象となります。
不正咬合が原因で起きる症状として、ご飯を食べなくなるというものがあります。
歯の噛み合わせが悪く、上手に食べられない・食べると咥内が痛むという症状です。
また、歯が鼻涙管と呼ばれる管を刺激している場合は涙や目やになどが目立つようになります。
気にして顔を頻繁に拭い、常に前脚が濡れているときなども注意しましょう。
咥内にトラブルが起きている場合はよだれが頻繁に出たり顎が腫れたりする症状に繋がります。
柔らかいご飯をあげる機会が多いと不正咬合は発症しやすくなります。
場合によっては歯を削るなどの処置が必要になりますので、症状が疑われた場合は獣医に相談するようにしてください。
先天性や怪我で発症してしまう場合もありますが、それ以外は食生活の改善で防げるケースも多いので不安な人は獣医に相談しながら食事を見直してみましょう。
ソアホック
もう一つ、うさぎがかかりやすい病気に「ソアホック」と呼ばれる皮膚病があります。
通常うさぎの脚は全て毛に覆われていますが、地面に当たる足裏の部分の毛がなくなってしまい皮膚が擦れ炎症を起こしてしまう病気です。
内臓疾患から毛が抜けてしまうというより、床と脚を擦ることで毛が抜けてしまい、さらに皮膚も擦ってしまうという症状です。
早期で発見できれば治療も難しくありませんが、すり傷になり膿んでしまったりするとそのぶん治療も大変になります。
特に体重が重い子などは脚にかかる負担も大きくなるので、ソアホックになる可能性も高まります。
あまり歩きたがらない様子などが見られたら、脚裏が赤くなっていないかチェックしてあげてください。
この皮膚炎がストレスとなり食欲不振が起き、栄養失調から他の病気を引き起こしてしまうというケースもありますので、けっして「たかが擦り傷」と思わないようにしましょう。
体調不良を訴える足ドン
うさぎの行う習慣の一つに「足ドン」と呼ばれるものがあります。
名前の通り脚で床をドンと叩く行為で、これはストレスを訴えるときに見られる行為です。
住環境に不満がある、運動がしたいという要望で足ドンをするときもありますが、体調不良から来るストレスから足ドンをしている場合もあるので観察が必要になります。
例えば外に出しても走り回らずじっとしている場合などは体調不良から来る足ドンの可能性が高くなります。食欲不振や下痢、お腹の張りなど足ドン以外に体調不良を訴えるサインがないか確かめてあげてください。
また、中には体調不良であることを隠したがる子がいます。
「我慢できているから大丈夫」と判断せず、誤魔化すことのできないうんちや尿のチェックなどをしっかり行い、不審な点があればうさぎが健康そうに振る舞っていても獣医に相談するなどしてあげてください。
定期健診とかかりつけの獣医を
ペットを飼う上で重要になるのは、「かかりつけの医師を持つ」ということです。
犬や猫の症例はたくさん見ていてもうさぎはあまり経験がないという獣医も珍しくありませんので、「動物病院が近所にあるから大丈夫」という判断をせず「うさぎを見てくれる動物病院」をあらかじめ探しておくようにしましょう。
小動物を専門にしている動物病院であればうさぎを専門的に見れる獣医がいる可能性も高くなります。
候補が見つけられたら、インターネットの口コミを検索したり実際に検診で訪れてどのような病院なのか、うさぎが健康な段階でチェックしておくといいでしょう。
病院が見つけられたら、定期的な検診に通うことが大事になります。
健康な状態をあらかじめ見せておけば病院側もそのうさぎがどのようなうさぎなのか判断しやすいですし、体調不良のサインにも比較的早期に気付けるようになります。
またうさぎからしても、健康な状態のときに病院に慣れることができれば病院自体がストレスになってしまうという事態を防ぐことができます。これらの利点からも、「病気になったから病院に通う」のではなく「健康なときにも定期的に病院に通う」という意識で病院と付き合っていきましょう。
まとめ
うさぎも生き物なので、清潔で快適な住環境を整えていたり栄養バランスを十分に考慮した食事を摂らせていても、予想できないことをきっかけに怪我をしたり体調不良を引き起こしたりもします。
また、多くの人が専門家と言うわけではありませんので、うさぎの体調不良のサインを見逃してしまったり、症状が出てから気付くという人も珍しくありません。
うさぎの体調不良のときに何より重要になるのは「信頼できる獣医が近くにいるかどうか」です。
これについてはいざというときに探しても間に合わないことが多くありますので、うさぎの体調が悪くなる前にあらかじめ行動しておいてあげてください。
そのほか、食事管理ノートをつけたり日頃から運動をさせたり、うさぎの健康のためにできることをコツコツ始めていきましょう。